飛んでけすなぎも

赤色のあなたへ想いをのせて

デストラップにはめられた話①(ネタバレあり)

2017年7月8日(土)
橋本良亮くん出演の舞台「デストラップ」を東京芸術劇場にて観劇してきました。


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観劇して生み出された感情を、しっかりこの手で文章にして形にする事が好きなのではてブに感想を書きます。

【注】ネタバレに繋がる事も出てくるのでご注意ください!!!観劇前の人はリターン!!本当に「押すなよ、押すなよ」っていうフリではなくて、絶対その方がめっちゃくちゃ面白いから!!!!



























舞台「デストラップ」は第1幕と、第2幕で構成されています。第1幕の終わり、水を飲む事すら忘れて、ただただ呆然とロビーに出た私の耳に入ってきた声はみんな「橋本くんが怖かった」「びっくりした、ハッシーが怖い」という声でした。



今回、私の応援しているアイドル、橋本良亮くんが演じるのは「クリフォード・アンダーソン」という青年です。



デストラップのあらすじを簡単に追いつつ、感想を書きますね。

物語の舞台は片岡愛之助さんが演じる劇作家の「シドニー・ブルール」の自宅。シドニーはかつて、大ヒット作を世に送り出した劇作家です。でも、最近は連続して失敗作続きのスランプばかり。高岡早紀さん演じる妻のマイラはそんな彼に寄り添って、大丈夫よと励ましますが、すっかり気落ちしています。

そんな彼に、橋本くん演じる「クリフォード・アンダーソン」から「デストラップ」という処女作が送られてくる所から始まります。クリフォードは、シドニーの講座で台本の書き方を学び、いつか大ヒットを飛ばす劇作家になる事を夢見て処女作を書き上げたのでした。恩師であるシドニーにぜひこの作品を読んで評価し、必要があれば添削してほしいと頼んできたのでした。



シドニーはクリフォードの作品を読んでみます。それはスランプ続きのシドニーからは思いつかない、若い才能に溢れた素晴らしいサスペンスの物語でした。



シドニーは、この作品を奪ってしまおう、孤独なクリフォードの命を奪って隠蔽すればバレない…と考えます。

妻のマイラはそんな事をしてはいけない、作品は共作にすればいいと諭しますが、かつて大ヒットを飛ばした自身がクリフォードという駆け出しの作家と共作してやっと世に作品を出せるという事実がどうしようもなく恥ずかしくて、納得しません。

そんな事をしてはいけない、きっとこれから良いアイデアが浮かぶはずよと必死に諭すマイラにそんな事しないよ、と悪い表情でたしなめるシドニー。夫婦といえども男と女、いい男のズルさってなんでこうも言いくるめられてしまうんでしょうか。マイラは確信は持てない状態でしたが、シドニーに宥められてしまいました。


シドニーは作品の感想を伝えたい、添削したいとクリフォードを自宅に呼び寄せます。


シドニーを演じる片岡愛之助さん、テレビドラマやバラエティで目にすることが多かったんですけど、いつも柔らかな雰囲気をまとっているイメージだったので幕が開いた瞬間からいつもよりずっと低めの渋い声で演じられていることに驚きました。そこには大作をかつて書き上げて名声を手にしたシドニー・ブルールが居たんです。




さあ、初めてクリフォードが舞台に現れます。チェックのシャツに少し大きなニットを重ね、ジーンズにブーツを履いた素朴な青年が恩師の家の扉を開けた時、憧れと尊敬のたくさん詰まった眼差しで嬉しそうにひとつひとつの事に喜びます。

かつてシドニーが書き上げた劇で使われた小道具やアイデアの種になるイリュージョンショーで使われた道具が壁一面に飾られているのですが、それを見て「これは〇〇の時の!」「〇〇で使われていた…あの作品が再演されなかったのは理解できない」とはしゃいで話す姿はまさに私たちヲタクと被るものがありました。


「憧れの劇作家の家に行けばやっぱりヤンチャに見えるくらいテンションが上がるだろう、だったら登場した時のクリフォードは明るい青年のイメージだな」とパンフレットで橋本くんが言っていた通り、大事そうに書き上げた脚本を抱えながら、時には膝を曲げて大きな体を上下させてはしゃいだり、シドニーに褒められて嬉しそうに目を輝かせたり、はたまたシドニーに失礼な事をしてしまってあわあわと慌てて取り繕ったりするクリフォードは、とても快活で可愛らしい夢を追う駆け出しの青年そのものでした。



コピーは他にないか、作品の事を他の誰かに相談したのかと確認しながらシドニーは作品について話します。まさにデストラップに獲物がかかるのを慎重に慎重に確認している状態ですね。


シドニーの自宅の壁には、かつてシドニーが書き上げた作品で使われた小道具や、アイデアのタネになる手品に使われる道具が所狭しと飾られていると先ほど書きました。作風はサスペンスなので、凶器として使われたナイフや手錠、斧や銃、ムチにボウガンなど禍々しいものばかりです。


夫の殺意が冗談だと確信が持てないマイラは「二人の共作にすればいい、ほら握手をして!」と必死に2人の劇作家の間を取り持とうと奔走します。

しかし、シドニーに添削してもらった後は、セカンドオピニオンの様に多方面の先生方にもこの作品を見てもらうつもりだと無邪気に話すクリフォードに、シドニーはかつて手品ショーに使われた手錠を両手にはめてみるように促します。


妻のマイラは、シドニーに「上の階へ上がっていろ」と言われるも、最愛の夫が殺人を犯すことをなんとか止めたくてずっと同じ室内のソファーに座っています。震える手で針仕事をしているふりをしながら。




「その手錠は実は外れる仕掛けになっているんだ、引っ張ってご覧」とシドニーはクリフォードに言いますが、いくら引っ張っても外れることはありません。

手錠の鍵を探すふりをしながら、壁にかけてあるナイフを手に取るシドニー

シドニーの本意に気づいたクリフォードは、必死に彼と距離を取りながら「今日ここに来ることを知っている人がいる、自宅にメモを残してきた、シドニーの電話番号も伝えてきた」とシドニーに訴えます。

「自宅にメモを残してきた所で、中に入れるのか?電話番号は新しくなっていて電話帳には載せていないし、講義をしていた大学には新しい番号を伝えていない…」と詰め寄るシドニー



何も出来ず、ただ緊迫した空気の中怯えたように見ることしか出来ない妻のマイラ。


両手に手錠をかけられて、部屋の端に逃げ込みながら怯えた目で恩師を見つめて「大学から確かに聞いた!」というクリフォード。「〇〇という番号か…もしくは△△か?」とシドニーに言われて「〇〇、たしか〇〇です!」と必死に答えるクリフォード。







すっごい性的に興奮する状況ですけどコレやばいっすわあ。







クリフォードが言った電話番号は確かに新しくした方の電話番号でした。嘘だよ、私が君を殺すと思ったのかいといつもの優しい恩師の顔に戻るシドニー。小道具で使われたナイフを戻します。


本当の鍵はこれだよと鍵を渡されて、椅子に座りながらガチャガチャと手錠の鍵を解除するクリフォード。

「ああ、よかった…」と胸をなで下ろすマイラと同じく、私たち観客も本当に殺すつもりはなかったのかと安堵しました。

































でも、手錠は外れません。


















「本当に、この鍵で合ってますか…?」と焦り始めるクリフォードに、壁にかけてあるムチを手に取ったシドニーが背後から近寄ります。




次の瞬間、舞台にはピアノの不協和音が響き渡り、力いっぱいシドニーがムチでクリフォードの首を絞めます。




ここの橋本くんの苦しみ顔が最強!!!




必死に逃れようと、文字通り舞台中を苦しんで転げ暴れ回り、時に白目をむき出しにしながら絶命する様は「壮絶」そのものでした。



「最前で入ったらトラウマだよ………」幕間のロビーで巻髪のめちゃくちゃ細いお姉さんがお友達と話していましたが、照明の演出もあいまって後列だろうが、2階席だろうがトラウマもんです。





首を絞め続けられ、ついに動かなくなるクリフォード。




畑に埋めるために、シドニーがクリフォードを引き擦って運ぶのですが、橋本くんの死体姿が本当に凄かった。あんなに舞台中を所狭しと暴れたあとなのに微動だにしない。本当に息をしていないんじゃないかというくらい。



乱雑に扱われるので、ごろんと床に仰向けにされるのですが、その時にうっすら汗ばんだ額とふわっとめくれる前髪、長いまつ毛がとても美しくて、友達にも終演後連絡したんですけど凄くわたしの性癖にコミットしました。





クリフォードの死体を処理した後、近所に住む超能力者であるヘルガが訪ねてきます。椅子や小道具に残る殺意の念を感じ取ってシドニーに伝えますが、シドニーは「劇で凶器として使ったからだ」等、上手く言いくるめます。公にはしていない、マイラの心臓の病の事もヘルガは言い当てました。

このヘルガを演じる佐藤仁美さんが、コミカルですごくホッとさせてくれる存在でした。物語を進める上でうまく転がしていくことはもちろん、ちょいちょい演出の福田さん節が効いたコミカルなアドリブを入れてくれたり、本当にスパイスとしてすごくいい味が出ているなと思いました。






件のことで怯えきったマイラはシドニーと距離をとります。

でも、そのシーンのシドニーもこれまた悪くてずるくてイイ男なんですよね。


触ろうとするシドニーを避けるマイラに「僕もそんなつもりでは無かった」「どうしてこんな事をしたのかわからない」と許しを請います。いつかきっと警察が来てバレてしまう、そしたら牢獄の中だと怒るマイラにもずるく笑いながら「バレるわけがない、証拠は?」「1週間もすれば君も平常心に戻るさ」「(デストラップで儲けて)車を新しくしよう」と甘い声で話すのです。


片岡愛之助さん、ずるい男を演じさせたらめちゃくちゃシビれる役者さんだなあと思いました。愛って文字に全くひけをとらない。


宥めるように優しく妻を抱き寄せるシドニー。この時のマイラ演じる高岡早紀さん、華奢さもあいまって凄まじく女性的で美しい。抱き寄せられて腕に収まるって当たり前の動作ではあるけれど、こういう所作ひとつでもこんなに美しくて惹かれるだなんて女優さんってすごいお仕事だなと見とれました。





優しく妻を宥めて、心臓の心配をしながら優しくキスをするシドニー。不安そうな顔をしながらもそれを受け入れてしまう妻のマイラ。アア〜!ほんと男ってズルい!


優しく頬をなでて、立ち上がってスタンドの灯りをそっと落とすシドニー。細かい台詞回しは再現できないんですけど「さて、先程経験した様な恐怖心は性欲も掻き立てるのかな…?」的な事をニヒルに笑いながらスタンドに手を伸ばすんですよ。やばない?これ、エロない?


人生いつでも思春期なので正直「フゥー!洋画みたいなエッチなシーンくるぜえ!」って鼻息荒目にして見てました。





















次の瞬間、勢いよく開くフレンチドア。













死んだはずのクリフォードが、泥だらけになり絶叫しながら棍棒を持ってシドニーを何度も何度も殴りつけます。あの憧れのたくさん詰まった眼差しで恩師を見つめていた快活な青年が、狂気の表情で絶叫しながら暗闇で何度も、何度も殴り続けるのです。


暫くして、全く動かなくなるシドニー。力尽きたのか床に這いつくばって、肩で息をしながらマイラを静かに見つめるクリフォード。




怯えて部屋の隅に追い詰められるマイラが「お願い、来ないで、やめて」と懇願しますが、クリフォードは狂った表情で髪を振り乱しながら棍棒を握りしめてフラフラとマイラに迫っていきます。



いよいよマイラを追い詰めてクリフォードが棍棒を振り上げたその時、マイラは病を患っていた心臓に発作を起こし、息絶えるのでした。







「デストラップ」という舞台の題名が示すのはこのどんでん返しかと、本当に驚きました。さっきまであんなに可愛らしい仕草で尊敬する人の傍にいた青年が、狂気を纏ったモンスターになって次々と人を襲う。本当に、このシーンは大好きなアイドルの現場なのに、恐怖で息を忘れて固まってしまいました。




でも、1幕はこれで終わりではなかった。
















マイラの死を確認したクリフォードの横で、むくりと起き上がるシドニー。「スチロール製でも、棍棒でなぐられると痛いものだな」とクリフォードに笑いかけます。






そう、全てはここまでが狂言シドニーとクリフォード共作の「デストラップ」だったのでした。




これは皆さんに伝えたいんですけど、この舞台の恐ろしいのがこの時点で、第1幕なんですよね。


正直今回の舞台は「サスペンスコメディー」と聞いていたので、人は死ぬことはあってもここまで壮絶というか、怖くてゾッとして背筋が凍る思いをしてしまうような事があるだなんて予想もしていませんでした。シドニーが言う恐怖心と性欲が関係しているのかというのと同じく、笑いやホッとする演出があるからこそこんなに怖かったんだと思います。

どんでん返しって言われてみればある程度心の準備ができるものだけれど、さらにそれを上回る良い意味での裏切りが幾重にもあるのがこの「デストラップ」という作品なんですよ。40年近く前に上映されていた作品なのですが、ジャンルとしてはスリラーだったんですって。本当に怖くて、幕間みんな呆然としながら「怖い…」としか言い表せなかったんですよね。それくらい衝撃的でした。


さて、この後第2幕も凄まじい展開と自担の演技が見れるわけなのですが、長くなってきたのと深夜まで時間がかかってしまったので一旦この記事はここまでとさせていただきます。

第2幕の感想も後ほど、随時アップします。